●水族館「南知多ビーチランド」としての調査研究
南知多ビーチランドは昭和55(1980)年に水族館と遊園地を併せ持つ総合海浜公園として開業し、リピーターが多い地元密着型の施設です。また、ガイドブックなどでは「イルカショー」や「さわれる水族館」として有名ですが、博物館相当施設の水族館としての南知多ビーチランドがこれまで行なってきた代表的な調査・研究は下記の表の通りです。
例えば、スナメリのDNA調査により地理的に離れた5地域(仙台湾―東京湾、伊勢―三河湾、瀬戸内海―響灘、大村湾、有明海―橘湾)におけるスナメリはそれぞれ特異な系統群に分かれることがわかりました。また、ウミガメの産卵調査により、ウミガメの雄雌を決定する孵化期間中の臨界温度(雄と雌が半々で生まれる温度)の研究を行ないました。2000年に名古屋の堀川に迷い込んだシャチの救出劇にも協力しています。
主な調査・研究
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海岸に死亡漂着したスナメリの個体調査(性別・体調などの生物調査や皮質・筋肉・肝臓・腎臓への汚染物質の調査)<三重大・水産庁・愛媛大学と連携>
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スナメリの目視調査により生息数の把握
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海岸に死亡漂着したウミガメの個体調査(性別・甲長・胃内容物などの生物調査)
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海岸に上陸したウミガメの個体の調査(産卵上陸した個体数の把握)
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人工衛星を用いたアルゴスシステムによる追跡調査(ウミガメの回遊経路の把握)<日本ウミガメ協議会と連携>
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魚の底引き網・海洋調査(遠州灘の生き物を把握)
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●地元の人とともに
目視調査では、スナメリは「Save Our Sea」、ウミガメは「Save Our Sands」というポスターを配布し、生息しているのを見たり、死亡漂着したものを発見したりしたら、連絡してくれるように広報しています。その甲斐あって、漁師さんや地元の住民からいろいろな情報が南知多ビーチランドに入るようになりました。珍しい魚が網にかかれば見に行き、遠州灘の生き物の情報を収集しています。地元の漁師さんとの信頼関係から地域の海を見守っているのです。
●生き物とのふれあいを大切に
ビーチランドの特色の一つは触ったり、餌をあげたり、ボールで一緒に遊んだり、来館者が生き物と触れあえる機会が多くありことです。これは生き物との良い思い出をつくり、生き物を好きになり、生き物の味方になってほしいと願っているからなのです。生き物にダメージを与えている人間の中に少しでも多くの味方を作ることが地球にとってもプラスになると考えているのです。
●日間賀イルカリゾートでイルカもリフレッシュ
しかし、ビーチランドのプールで過ごすのが、生き物にとって、ストレスがないわけではありません。自然の海で過ごさせることもリフレッシュになるのではないかと考え、平成7年からイルカを知多半島南端から東へ3Hのところにある日間賀島の西浜海水浴場に連れて行っています。イルカと一緒に人が泳ぐことは禁止されていますが、イルカが自ら人に近寄ってくる場合はイルカに触ることもできます。
●教育・体験型の水族館を目指して
今、ビーチランドが力を入れているのが体験学習です。死んでしまったスナメリの胃の中からアイスクリームやスナック菓子の袋など大量のポリ袋が出てきた写真を見せて、ゴミを捨てないような教育をしたり、子どもたちが自分で見つけたカニや海草などと比較ができるように奥田海岸で見られる生き物の図鑑「奥田はかせ」を手作りでつくったり、地元の学校や自治体、大学と連携して地域の子どもたちへの環境教育に取り組んでいます。子どもが「カメやイルカが死んじゃうからゴミを捨ててはダメ」と生き物の味方になって、知多半島の海の環境にプラスになってくれる人が増えることを期待しています。
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